ハンマー投げで培った「足」で競輪にチャレンジ 全日本インカレで優勝 野口 裕史さん ハンマー投げで培った「足」で競輪にチャレンジ 全日本インカレで優勝 野口 裕史さん

■ 野口 裕史さん [のぐち・ひろし]

1983年生まれ。北海道北斗市出身。順天堂大学に進学後、3年次に全日本インカレで優勝。
2015年陸上男子ハンマー投げ日本選手権を制し21年ぶりの新王者となる。
千葉サイクルクラブに所属後に、競輪選手を目指し日本競輪学校に在学中。

ハンマー投げで培った「足」で競輪にチャレンジ

ハンマー投げの選手として日本選手権で優勝するというキャリアから一転、今年から競輪選手へと転向する野口裕史さん。実は以前から、千葉競輪トレーニングの場として活用していたそうです。ハンマー投げの選手が、千葉競輪場でトレーニングをしているとは意外な話。一体、どんなトレーニングをしているのでしょうか?また、相撲の琴奨菊関とは、トレーニング仲間として共に汗を流す仲間だとか。そんな野口さんに、千葉競輪場はどのように関わってきたのでしょうか。

「競輪ってこんなにかっこいいんだ」と思った

「もともと競輪には興味がありました。最初に競輪に興味を持ったきっかけは、大学の陸上部の先輩が競輪選手(海老根恵太選手)なんですよ。その先輩が2009年にKEIRINグランプリに出るということで、陸上仲間と一緒に見に来たんです。そうしたら先輩が優勝したんですよね。その時自分はハンマー投げをしていたのですが、『競輪ってこんなにかっこいいんだ』と思って、その気持ちがずっと自分のなかにあったんです。

実は、陸上選手から競輪選手になる人って結構多いんですよ。だから『自分もいつかは』という気持ちはありました。社会人として陸上を続けて10年目の年に、もうここで達成できなかったら陸上をやめようと決めていたんです。そこで『競輪の適性試験を受けたい』って思ったんですよね。無事合格して、5月10日から本入校です。何事もなければ来年の3月に卒業して、7月頃にレースに出られる予定です」

野口選手がなぜ競輪選手に転向しようと考えたのか。自分自身が2015年にハンマー投げで日本王者になるずっと前に抱いていた、競輪という競技への憧れが原動力となったのですね。ハンマー投げ選手から、競輪選手へ。今から野口選手の活躍が楽しみですね。

「競輪ってこんなにかっこいいんだ」と思った 「競輪ってこんなにかっこいいんだ」と思った

琴奨菊関が感心したハンマー投げのトレーニング

「琴奨菊関とは、ハンマー投げの選手だった頃に共通のトレーナー・塩田宗廣さんを通じて知り合いました。菊関がハンマー投げのトレーニングを見たいということで、見に来たんです。その時に『動きながら力を出すってすごいことだな』って言われたんですよね。塩田さんはもともとパワーリフティングの選手なので、ベンチプレスやスクワットのような止まった状態でパワーを出すのは得意なんです。でも、動きながら力を出す感覚がなかったらしく、それは僕で勉強したそうです。ちょうどその時、菊関は角番で落ち込んでいて『モチベーションが上がらない』と言っていたのを覚えています。だから『一緒にトレーニングしましょう』と誘ってふたりで始めました。千葉競輪場で練習するのは気分転換になるそうです。相撲部屋より広いので、大きい声も出せるし。塩田さんは兵庫に住んでいるので、こちらに来られない時は僕が佐渡ケ嶽部屋に行く時もあります。菊関は飲み込みが早いので、ちょっと教えたらできるんですよね。そうしていたら今年の初場所に、菊関が優勝しました。あの時は自分のことのように嬉しくて、泣いちゃいましたね」

野口選手と琴奨菊関が、ストイックでありながらもお互いを高め合うトレーニングの様子がお話から伺えます。お互いに別分野の競技のプロであるが故に、自分にはない、自分のやっている競技だけでは気がつくことのできない身体の鍛え方、使い方などを研究しトレーニングしてきたからこそ、野口選手と琴奨菊関の今の強さがあるのですね。

琴奨菊関が感心したハンマー投げのトレーニング 琴奨菊関が感心したハンマー投げのトレーニング

ハンマー投げと競輪の意外な共通点とは?

「競輪選手と話をして、ハンマー投げも競輪もどこに一番力を入れたら加速するのかというポイントは一緒なんだなって思いました。だからこうやればいいんだなっていうのは分かるんですけど、自転車に乗ると『あ、できてないな』って。それはもう毎日思ってます。でも、できないのが分かることはいいことだと考えています。

ハンマー投げは上半身を使うイメージが強いと思いますが、実際は腕だけではありません。ハンマーを投げる前に回転しますが、あの円の半径が長ければ長いほどいいんですよ。半径が1センチ伸びると1メートルくらい記録が変わると言われているくらい。となると、上半身に力を入れてもダメなんですね。ハンマーは足なんです。あと投擲とかもそうですね。一見腕力が全てみたいな感じがしますが、投擲でも結構腕力ない人の方が飛んだりするんですよ。腰や脚の使いかたがいい人が記録が伸びるんです。その感覚は自転車でも一緒ですね。

違うところはメンタル面ですかね。ハンマー投げは自分との戦いというか、練習でやったことを本番でいかにそのまま出すか、というところがあります。競輪は他の選手との競りがあるので、そこが違いますよね。あと、ハンマーは投げは自分が投げて終わりですけど、競輪は一斉にドンってスタート。その感じをこれからどう掴んでいこうかなと。それは不安ですし、難しいところです。でもチャレンジしていきたいです」

千葉競輪場を、競輪以外のアスリートがトレーニング場として活用していることを知らなかったという人も多いのではないでしょうか。しかし、千葉競輪場の広々としたバング、そしてその上に広がる青空を見ていると、『ここで運動したら、気持ちよくトレーニングできそう!』という気分になります。これから千葉競輪場に色々なスポーツ選手が集まり、『トレーニングの聖地』になったり、プロのスポーツ選手だけでなくアマチュア選手や子どもが気軽に活用できる施設になったりしたら、千葉競輪場の違う一面を見ることができて面白そうですね。

How do you use Chiba Keirin? 千葉競輪場をどうやって使いましたか?